高齢者の分類は65歳以上を対象とすることが多い。2018年10月1日の日本の総人口は約1億2644万人、このうち15歳未満が約12%、15-64歳が約60%、65歳以上が28%である。65歳以上の半数以上が75歳で、人口構造は縦に伸びているのが現状だ。
今回参考にした資料
今回参考にした資料:
働く高齢者が増えている
高齢社会白書によると、働く目的は違えど65歳を超えて働きたいという人は約80%という結果を得ている。もっとも「働けるうちはいつまでも」という回答はあまり考えてないともとれる。
働く目的で最も多いのは「経済的理由」である。ゆとりのある生活をしたいもこの中に含まれるが、この結果は働く目的が長い間お金であったためで、その後遺症とも考えられる。
やりがい、顧客のため、という回答も年齢的に差はあれど、どの年齢に対して調査をしても得られる回答だ。高齢者が働く目的は、高齢者になる前とさして変わりはない。
むしろ「経験やスキルを活かす」という考え方に懸念を感じる。過去の経験やスキルが活かせるのは人材であって人手ではないからだ。だがほとんどの高齢者の労働環境は人手として期待されていることが多いのが現実だ。
生産年齢人口の減少が進む中、生産性が同じであれば生産に携わる人口を増やすしかない。縦に伸ばすか(高齢者の雇用)、横に広げるしか(主に女性の雇用)しか方法はないのである。
高齢者の暮らしが変わる
人生後半戦になると暮らしぶりが変わる。まず加齢による身体状態の変化が始まる。いくらアンチエイジングを行っても限界がある。加齢は受け入れるしかない。
考えなければならないのは、加齢の受け入れ方である。いつまでも人生前半戦のような暮らしぶりはできない。自分の健康状態が生活環境に合っているかどうかを考えなければならない。
特に人生後半戦の本拠地を考えて置かなければならない。加齢が進むにつれて行動範囲は狭くなり、生活圏も徐々に狭くなってくる。その時に自立して暮らしていけるだろうか。
もうひとつ注意を払わなければならないのが時代の変化である。科学技術の発達により時代の変化に追いつけなくなる。その時に自分と時代の変化の仲介役はいるだろうか。
介護や医療の分野にも科学技術の発達により介護予防や予防医療だけでなく、高齢者自身が遠隔医療やAI医療、ロボットやAIによる介護にも対応しなければならなくなるのだ。
社会参加と孤独・孤立
高齢者が働く環境や暮らす環境の中でしばしば人間関係が話題になる。端的に言うと「孤独・孤立」という問題である。正確には「孤独」と「孤立」は異なり、問題視しなければならないのは「孤立」である。
「孤立」は孤立する、孤立させるというように能動的、受動的な状態であるが、「孤独」は孤独になるという能動的な意味が強い。しいて言えば孤立させることが大きな問題なのだ。
「孤独・孤立」の対局にあるのが「社会参加」である。社会参加にはボランティアや地域活動があるが、人生後半戦になって時間ができたからと社会参加するのはお門違いだ。
ボランティアは誰もができる人手として参加する場合と専門家として参加する場合がある。経験やスキルがあっても現場が求めていることと違えば文字通り場違いになってしまう。
高齢者の社会参加を勧める向きもあるが、高齢社会白書によれば「特に活動はしていない」という回答が60%あり、社会参加をするために「やっておけばよかったと思うことはない」という回答が50%ある。つまり積極的に社会参加を考えてはおらず、受け身の考えが多いように思われる。
高齢者の学び方
働くことも暮らすことも、そして社会参加することも人生後半戦に限ったことではない。人生後半戦は人生前半戦と何が違うのだろうか。それは時代の違いである。
現在、人生後半戦を迎えている人は昭和生まれである。昭和の時代に明治の時代の働き方、暮らし方、社会参加への仕方を持ち込んでいただろうか。新しい時代として生きてきたのではないだろうか。
現代は昭和の時代よりも格段に速いスピードで変化している。その時代に生きていくことは新しい時代を学ぶことである。自分の好きなことを学ぶのは趣味としてはよいだろう。ただこれかの時代を生きていくためには不足していることが多い。
新しい時代の何から学び始めるかは人それぞれであるが、過去に一区切りをつけなければならない。社会の高齢化より危惧しなければならないのは少子化である。
人生後半戦は自分たちのを中心とした高齢化社会を考えるのではなく、もう一歩先の未来に向けて学ぶことが肝要ではないだろうか。
人生後半戦に一番必要なことは「学び」である
学びは経済学・工学・哲学・・・というようように既成の学び方でなくてもよい。「〇〇学」と自分で作ってもよい。未来に向けての学びであれば、実学の学際として成り立つと思う。
日本の未来のために学ぶ力は不足していない、学びを作る力が不足しているのである。今さえ良ければという考え方ではなく、未来に向けた体系づけた考え方が人生後半戦にも必要なのである。
(つづく)