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「2000万円問題」は選挙前にして作られた問題

金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」令和元年6月3日

 

喉元すぎれば2000万円も忘れる

2000万円問題の発端は、金融庁が報告した「老後資金2000万円が必要」にマスコミと野党が問題視して飛びついたことにある。
参院選にもこの問題を争点とした野党と火消し側に回った与党との戦いとなり、結果は可もなく不可もなくという結果に終わった。
選挙が終われば2000万円問題も薄らいでしまうであろう。

 

 

2000万円問題を報告したのは誰か

「老後資金2000万円が必要」と報告したのは「金融庁」ということになっているが、金融庁の誰なんだろうか。
その前に金融庁の説明を少ししておくと、2001年に大蔵省が財務省と金融庁とに別れ、財務省が国のお金の管理することになった。
お金は国だけでなく民間のお金もあり、民間のお金を扱う金融機関の監督を行うのが金融庁である。

 

金融庁の金融審議会のワーキンググループの・・

金融庁には金融審議会という内閣総理大臣、金融庁長官および財務大臣の諮問機関が置かれている。
諮問機関とは行政から意見を求められたときに答える専門家で構成された公の機関である。
諮問機関以外にも、協議会、調査会、専門委員会など耳にしたことがあると思う。

 

金融審議会の市場ワーキンググループってなに?

金融審議会には、総会、分科会の他に、諮問に対して適宜専門家で構成されるワーキンググループがある。
市場ワーキンググループは平成28年5月13日(2016年)に第1回の会合が開かれている。
諮問の内容は「市場・取引所を巡る諸問題に関する検討 」となっており、一見して2000万円問題とは程遠い。

金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第1回)議事次第

 

諮問事項(PDF) ※後述

 

2000万円問題を報告したのは学識者と金融専門家

「2000万円問題」の発端は、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」である。
この報告書の冒頭に、「市場ワーキング・グループ」メンバー名簿が掲載されている。
学識者と金融専門家で構成され、オブザーバーには関係省庁と金融関係の協会が名を連ねている。

市場ワーキンググループ委員名簿

 

 

 

市場ワーキンググループに求めたのは何だったのか

前掲の市場ワーキンググループへの前掲の諮問事項(PDF)は下記の通り。

「市場・取引所を巡る諸問題に関する検討」


情報技術の進展その他の市場・取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、
経済の持続的な成長及び家計の安定的な資産形成を支えるべく、
日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広く検討を行うこと。

 

この諮問に対する報告書が「高齢社会における資産形成・管理」である。
「高齢社会」とタイトルに付けてしまったことが「2000万円問題」の引金になり火をつけてしまったかもしれない。

 

何が言いたかったのか、ひと目で分かる図

報告書は三部構成になっている。

(別紙1) 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書

「高齢社会における資産形成・管理」

(別紙2) 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書

「高齢社会における資産形成・管理」資料

(参考) 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書

「高齢社会における資産形成・管理」の概要

 

3つめの(参考)を見れば何が言いたかったのか一目瞭然だ。

 

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金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について(金融庁)

 

◆報告書には2000万円問題とは書いていない

報告書から「問題」の2文字を検索してみると「お金の問題」として書かれている部分がある。

41ページ
寿命が延び活動し続けるということはそれだけお金がかかるということも意味し、
お金の問題は多くの者にとって避けて通れないものであろう
50ページ
心身の状態とお金の問題は密接に関係すると考えられ、
この両事業者が顧客本位の立場で連携することは、
顧客の利益につながっていく可能性が高いのではないだろうか。
51ページ
金融サービスにおいても、例えば、顧客の資金の使い過ぎが問題なら、
本人や周囲の者に自動的にアラートする仕組みを構築するなどのサービスの提供も考えられる。

 

部分だけ読んでもわからないが、高齢になって認知機能が衰えたきたときの対処について書かれている。

 

2,000万円の不足が生じると書かれているのは2ヵ所

同じように「2,000万円」で検索してみると2ヵ所あった。

16ページ
(2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、

20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる。
21ページ
夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、
まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。

16ページの(2)とは、収入が減り支出が増える・高齢者は元気・退職金が減るの3点が指摘されている。
全体で51ページある報告書で2ヵ所の記載が選挙の争点にまでなった「2000万円問題」である。

 

ではこの報告書で何が言いたかったのか・・(次回に続く)

2000万円問題は選挙前にして待ってましたとばかりに「作られた問題」だった。本来であれば「すでに分かっていた問題」のはずだった。諮問も答申も意図していたこととは異なる。

報告書で言いたかったことは、「資産寿命を延ばす顧客の行動をサポートするため、金融サービス提供者は適切な対応が求められる」ということだったに違いない。