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高齢社会を高齢者はどのように受け止めればよいのか(1)

高齢社会を高齢者はどのように受け止めればよいのか(1)|新おとな学Ver3 snias.com

 

 

女性が87.45歳、男性が81.14歳

 

7月31日に厚生労働省が2019年の日本人の平均寿命を「簡易生命表」で発表しました。

「女性が87.45歳、男性が81.14歳」で過去最高と報道されました。前年に比べ、女性は0.13歳、男性は0.16歳延び、いずれも8年連続更新しました。死因別では老衰が増加したものの、悪性新生物(癌)・心疾患・脳血管疾患・肺炎及び不慮の事故などが減少し平均寿命の更新に寄与しました。

令和元年度 簡易生命表 (厚生労働省)

 

平均寿命は各年齢ごとの死亡率を割り出し、0歳児の平均余命を推計した結果です。したがって実年齢の平均余命とは異なり、実際には平均寿命が短めに算出されています。

平均寿命(Wikipedia)

 

「平均寿命が過去最高を更新」という報道を見聞きして、また平均寿命が延びたと喜んだ人はどのくらいいるでしょうか。平均寿命が延びているのは日本の高齢者医療と高齢者介護が充実しているからです。最近の新型コロナ禍においても諸外国と比べて高齢者の死亡数が少ないのも高齢者向けの医療と介護の充実によるものだと考えられます。

 

 

 

 

 

65歳以上人口は3,589万人、高齢化率は28.4%

 

7月31日には内閣府が「令和2年版高齢社会白書」を公表しました。現時点では概要版と全体版を共にPDFで読むことができます(HTML版は後日)。なかでも概要版の「高齢化の状況と経済生活に関する意識」、全体版の「就業・所得と健康・福祉」については一読することをおすすめします。

(上記の要点)

  • 65歳以上の高齢者は3,589万人で、総人口の1億2,617万人に対して高齢化率は28.4%となります。
  • 高齢者の経済生活に関する意識は、調査対象の約4分の3(74.1%)が「心配なく暮らしている」と回答しています。
  • 働く高齢者も年々増加しており2019年の労働力人口6,886万人の内、65歳以上の高齢者は907万人と13.2%を占めています。
  • 一方、要介護認定を受ける高齢者(要介護者等)も増加しており628万人になりました。このうち75歳以上が554万人になっています。

令和2年度版 高齢者白書 (内閣府)

 

 

 

 

 

日本における高齢者化の問題は2つ

 

平均寿命にしろ高齢社会にしろなかなか実感がわかないのは、日本という大きな括りと65歳以上という大きな括りになっているからでしょう。

 

高齢社会白書では都道府県別の資料も掲載されていますので、自分の住んでいる都道府県を参考にすると少しは実情に近くなるかもしれません。

 

日本の高齢社会の問題を考える上で、高齢社会白書の最初に掲載されている「高齢化の推移と将来推計」のグラフは常に頭に入れておく必要があります。

 

また人口構造は国立社会保障・人口問題研究所の人口ピラミッドが一般的ですが、総務省統計局の「統計ダッシュボード」というサイトがおすすめです。都道府県・市町村・各国の1920年~2045年までの推移をアニメーションで見ることができます。

統計ダッシュボード - 人口ピラミッド(総務省統計局)

 

平均寿命、高齢社会白書、人口ピラミッドといいうたった3つの資料からでも高齢社会の問題を把握できます。問題は2つ、「医療・介護の増加」と「労働力の減少」です。

 

 

 

 

 

「医療・介護の増加」は社会制度のサイレントキラー

 

サイレントキラーとは自覚症状のないために放置され致命的になる病気のことです。高血圧、糖尿病、脳卒中などの生活習慣病に対してその危険度を表されるためにしばしば用いられます。

 

社会の高齢化も誰もが同じように年をとっていくので少しずつ高齢社会になっていたのですが、高齢者が7%を超えた時に初めて高齢化社会だということを知ったにもかかわらず、放置されたままになっていました。

 

高齢社会白書によれば7%を超えた高齢化社会になったのは1970年、14%を超えた高齢社会は1995年に、2005年から2010年にかけては21%を超えた超高齢社会になりました。2019年の高齢化率は28%超えの超々高齢社会になっています。

 

そして生活習慣病とは違い超々高齢社会を高齢社会に戻すことは不可能になっているのが現状です。3589万人の高齢者を抱えた高齢化率7%の高齢社会に戻すには総人口が5億人以上を有しなければならないのです。

 

高齢者医療への偏重

医療の対象となるのが高齢者に偏れば、当然高齢者を中心にした医学が偏重されます。過去の医学の発展は身体の仕組みと病原菌の研究によるものでした。20世紀以降もこの傾向が続く一方で生命の根源に関わる細胞・遺伝子レベルでの研究が進められています。

 

高齢者医療は医学の対象ではなく、生き永らえるための方法を医療処置として行うようになっています。年齢層別の医療を続けると人口構造によって歪められてしまうのは仕方ありません。

 

本来であれば生命の誕生・成長に関わる医療に力を入れるべきだと私は思うのですが、すでにある生命に対する医療に過度に重点を置いているように思います。

 

もちろん高齢者を蔑ろにしてよいというのではなく、高齢者だけではなくひとりひとりが高齢化することは避けられないことをもっと認識すべきだと思います。

 

高齢化による症状は遅らせることはできても予防はできません。すでに高齢者に入った年齢層よりも高齢者になる前の年齢層に医療だけでなくもっと力を注ぐべきではないでしょうか。

 

施設介護と家族介護

 

高齢者に対する医療で行われるのは「看護」であって介護とは異なります。看護は傷病を治療し日常の生活に戻るという明確な目標があります。

 

高齢者の「介護」は疾病の治療ではなく高齢化によって日常の生活での支障を補うためにの行為です。介護に似た用語に「介助」があります。介助は弱者への身体的な支援を中心とした行為です。

 

高齢者は65歳以上ですから、同じ行為でも65歳を境に介護と名前が付くわけです。介護される側にとってはすぐには馴染めないでしょう。

 

介護を行うには国家資格が必要です。介助の資格は民間資格ですが専門的知識に裏付けられた資格です。また介助は資格がなくても可能ですが、正確には介護は有資格者が行う行為だと考えるべきでしょう。

 

家族による介護は有資格者の介護とは異なり、精神的な面での介護であって資格の有無よりも信頼関係による行為です。有資格者による施設介護と家族介護は別物です。

 

介護を受ける高齢者はどちらを望んでいるのでしょうか。多くは家族介護ではないでしょうか。

 

(つづく)