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「2000万円問題」に該当する世帯はあるのか?

「2000万円問題」に該当する世帯はあるのか?|新おとな学 snias.com

 

 

前回は2019年の時点で「2000万円問題」は1200万円問題に減額されていることについてお話ししました。この問題の発端となった家計調査年報を見ていると他にも疑問がわいてきたので今回も取り上げたいと思います。

  

 

平均的世帯を基準にしても実感がわかない!?

 

家計調査年報には勤労世帯の家計収支が掲載されています。むしろ高齢無職世帯の家計収支は参考資料であってメインの資料ではありません。掲載されている「二人以上の世帯のうち勤労者世帯の家計収支」と「高齢夫婦無職世帯の家計収支」のグラフを比較してみました。

家計調査年報 2020

まず一見、二人以上の勤労者世帯(以下、勤労者世帯)と高齢夫婦無職世帯(以下、高齢者世帯)のグラフ幅が同じになっていますので同じ金額幅に見えますが、勤労者世帯の実収入は586,149円で、高齢者世帯は実収入+不足分で270,928円が横幅です。

なんと2倍以上の差がありますので、この差を踏まえて比較してください。1つのグラフに金額と%を織り交ぜるとこのようなことになってしまいます。これは誤解を生みやすい表示ですので見るほうが判断しなければなりません。

勤労者世帯の平均世帯人員3.31人、世帯主の平均年齢49.6歳となっています。高齢者世帯の設定は夫65歳以上、妻60歳以上となっています。かなり幅のある年齢層の平均ですので、これを見た人が自分とは違う、実態とは違うと感じてもおかしくありません。

日本人は平均好きで、かつては一億総中流と意識を持っていたこともあります。現在でも中の上、中の下と思っている人も多いのではないでしょうか。昨今の格差が問題視されている社会では平均の意味は標準的という意味ではなくなっています。

したがってこのような平均世帯のグラフを見て一喜一憂するのではなく、単に抽出したサンプルだと考えたほうがよいでしょう。特に昭和世代は平均点や偏差値で競争意識を持ち続けて時代を経験していますのでなおさらです。

 

 

 

高齢者世帯もかなり限定的な例ではないか?

 

高齢者の家計収支についても同様なことが言え、夫65歳・妻60歳という高齢者の世帯はあるにはあるでしょうが、この年齢には大きな意味があります。家計調査年報では高齢者を60歳以上としていることが多く、このグラフだけが夫65歳という設定になっています。

夫の65歳という年齢は老齢年金が受給できる年齢であり、60歳の妻は年金を受給できません。ここで必要な知識は、2階建てと言われる年金の仕組み、年金の受給資格と受給年齢、年金受給資格の加入年数、特別給付と加給年金、在職老齢年金などが必要になります。

夫婦二人とも65歳以上の場合には年齢的には受給資格がありますが、妻の年金加入期間によって受給年金の種類や金額が異なります。また妻が60歳から65歳まで年金保険料の支払いを行う必要が出てくる場合もあります。

夫65歳・妻60歳という設定は受給の区切りとなる年齢に合わせていますので様々なパターンが考えられます。年金自体は世帯に給付されるのではなく個人に給付されるので、平均を参考にしたり、特定の条件下での受給金額を計算しても該当する場合は少ないのです。

したがって家計調査年報で示されているグラフはサンプルであって、すべての年金受給者に当てはまるわけではありません。年金については日本年金機構のサイトを見るのが正確ですが、やはり各世帯の条件に当てはまるとは限りません。

そのようなときは年金事務所や年金相談センター、市町村の年金課に相談に行くべきです。予約制になっていますのでまずは電話で申し込むとよいと思います。2017年(平成29年)に老齢年金の受給資格年数が25年から10年に短縮されていますので、気になる方はなるべく早めに相談すべきです。

 

日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp

 

結局「2000万円問題」はなんだったのか?

 

このように考えると「2000万円問題」は、条件によっては2000万円不足する場合もありますよということだったのではないでしょうか。2000万円ではなく3000万円が必要だとか、2000万円なんか必要はないという断定的な発言に耳を傾けても仕方ありません。ひとりひとり年金受給条件が違うのですから。

なぜ家計調査年報を作成している総務省統計局が不足分として表示したのか、また一番よく分かっているはずの厚生労働省年金局が年金の計算は一様ではないと指摘しなかったのか、さらに老後資金が不足するとしてiDeCoという畑違いの資料を作成したのかはわかりません。

財務省金融庁としては総務省、厚生労働省も言っているのだから、働かずに試算を増やせる投資をしましょうと働きかけたかったことに、いわゆる忖度、もしくは省庁間の利害関係でもあったのかはわかりません。

 

 

 

高齢者の家計は自分で考えるしかない!!

 

このように家計を含めてライフプランの相談にのってくれるのがライフプランナーです。とは言っても、ライフプランナーはフィナンシャルプランナーの資格を持っていますので、金融機関とも関係が深く金融商品・保険商品の勧誘がつきものです。相談だけのってもらえるわけがありません。

公的機関に相談しても現在の制度を否定することは言いませんので、結局のところ自分で学び考えるしかありません。まずは自分でできることから学び始めましょう。間違いなく年金だけでは暮らせない世帯がこれから増えてきますので。

 

次回も「家計調査年報」グラフからわかること、考えなければならないことをお話しします。